調剤薬局には通常複数の薬剤師が在籍していますが、規模が小さな薬局では調剤、監査、服薬指導、薬歴記入などの業務を一人の薬剤師が担うことも少なくありません。処方箋枚数が多いのにもかかわらず薬剤師が一人しかいない場合は、業務をどのように工夫すればよいのでしょうか。

そもそも一人薬剤師ってあり?

 調剤薬局の業務は、近隣の医療機関の数や診療科目、それらの医療機関から発行される処方箋の枚数と内容によって左右されます。比較的小規模の調剤薬局などで、一日に処理する処方箋枚数が少ない場合は、一人薬剤師でも問題なく業務をこなせます。

 しかし、業務量が多い場合は「勤務時間内に業務が終わらない」「休憩が取れない」などの困難が生じます。薬剤師一人体制で薬局を営業すること自体は違法ではありませんが、労働時間が8時間を超える場合は必ず60分の休憩を取ることが労働基準法によって定められているため、休憩する暇がないほど業務が多い場合は改善が必要です。

一人薬剤師のメリット・デメリット

 業務が多い、責任が重いといったイメージがある一人薬剤師ですが、労働環境や待遇などを見るとメリットもあります。メリットとデメリットを比較して、一人薬剤師としての働き方が自分に合っているかを考えてみましょう。

一人薬剤師のメリット

 自分のほかに薬剤師がいないため、人間関係で悩まずに済みます。狭い調剤室で複数人が作業をすることにストレスを感じる方は一人薬剤師としての業務が向いているかもしれません。一人薬剤師なら調剤のほかに在庫管理、発注業務、レセプトなども行うので、薬局全体の仕事がわかり、薬剤師としてのスキルを高められることもメリットです。

 また、一人薬剤師は責任の範囲が広いため、給料が高額で提示されることもあります。人手不足に悩む地方などでは、年収700~900万円で薬剤師を募集する調剤薬局もあります。

一人薬剤師のデメリット

 薬剤師が一人しかいない職場のなかには、患者対応でトイレ休憩も取れないほど忙しい職場もあります。代わりの人員がいないので有給休暇も取れず、自分の時間を確保したい方にとっては大きなストレスになります。処方箋の枚数が多い場合は、薬歴の記入などで残業時間が増えてしまうでしょう。

 また、自分で調剤した薬の監査を自分でしなければならないので、薬剤師が複数いる職場よりも必然的に調剤過誤のリスクが高くなってしまいます。どんなに混雑していてもミスは許されないため、精神的な負担は避けられないでしょう。

一人薬剤師の業務を楽にするには

 厚生労働省が2019年4月に発表した「調剤業務のあり方」では、ピッキングや分包など調剤業務の一部は薬剤師以外のスタッフが行っても問題ないという指針が示されました。業務量が多い場合は、薬剤師資格を持たないスタッフと連携し、薬剤師にしかできない調剤や服薬指導に専念することで業務量を減らしましょう。

 また、業務の効率化のために調剤機器を充実させたり、自動チェック機能がついた薬歴管理システムを導入することもひとつの手段です。

やりがいを忘れる前に……転職で一人薬剤師を抜け出そう

 一人薬剤師としての勤務は、混雑時やクレーム対応が必要な際にも冷静かつ正確に業務をこなせる方には適しています。ただし、休みを確保できないと体調を崩したり、調剤過誤などのミスが起きやすくなったりするので注意が必要です。業務過多での勤務が常態化している場合は、ほかの薬剤師と連携して仕事ができる現場への転職を検討しましょう。

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