薬剤師は高難易度の国家試験を突破し、ようやく資格を得られる職業ですが、薬剤師になった後もさらなるスキルアップを考えている人は少なくありません。そんな人たちに人気なのが「海外留学」です。薬剤師の海外留学にはどんなメリットがあるのでしょうか?

海外留学する薬剤師が増えている?

 医療従事者としての幅をより広げていくため、医師や看護師だけでなく薬剤師の中でも海外留学を希望する人が増えてきています。その理由として多いのが「医学や薬学に関する知識をより深めるため」です。

 薬に関わる最新の研究は世界各国で進められています。海外の医学関連論文から最新の知識を得るためには、日本語訳ではなく、原文で意味を理解できた方がスムーズでしょう。そのためには英語力が不可欠ですが、専門用語を理解できるまでのスキルは簡単に身につくものではありません。そこで、海外に留学しコミュニケーションの中で語学力を磨こうとする人が増えているのです。海外留学に行けば、論文の作者や関係者と直接意見交換をするチャンスにも恵まれるかもしれません。

 海外で身につけた最新の薬学知識や英語力は、日本に帰国してからも役に立ちます。海外の薬について患者さんから質問された際は、読解力を活かして効能や副作用を詳しく説明できるでしょう。また、英語を話す患者さんとの意思疎通もスムーズになり、薬剤師としての活躍の幅はますます広がることでしょう。

薬剤師の留学の手段

 薬剤師になった後で海外留学をするにはどんな手段があるのでしょうか。薬剤師として海外で働きながら勉強ができればいいのですが、基本的に薬剤師の資格は資格を取得した国の中でしか使えません。

 そこで考えられるのが、外国の大学院で学ぶ方法です。日本で薬学部を卒業していれば海外の大学院を受験できるので、学生として留学し博士課程の修了を目指すのがおすすめです。博士課程をとった後は、現地でインターン経験を積んで薬剤師試験を受ける道と、日本に帰国して就職先を探す道があります。薬剤師試験の受験資格や留学に伴う規定は国や大学によって異なるため、希望の留学先の状況をよくチェックしましょう。

 また、20代であればワーキングホリデーを利用して、海外で英語や薬学を勉強するという選択肢もあります。薬剤師として仕事に就くことはできませんが、ワーキングホリデーを利用して海外生活を経験すれば英語力は自然に鍛えられるでしょう。

留学のために必要な準備

 海外留学のためには、ビザ申請などの事務手続きはもちろんですが、留学する国に関しての知識を深めることも大切です。たとえば、現地の治安。日本に比べて治安の悪い国が多いため、犯罪が多い「危険エリア」はチェックしておきましょう。また、物価は国ごとに異なるため、世界情勢も踏まえてしっかり意識しておきたいところです。

 また、単身で留学する場合は日常会話レベルの語学力がなければ、日常のあらゆる場面でコミュニケーションに苦労するでしょう。語学力に自信がないようなら、事前に英会話教室などに通い英語力を磨いておくのがおすすめです。

 留学には多額の費用が発生します。海外滞在中の生活費はもちろん、大学院に通おうと思うなら、学費についてもしっかり計算しておかなければなりません。経済的に余裕がないなら、奨学金制度で費用を工面することを考えましょう。

英語ができる薬剤師は今後重宝される

 薬剤師が海外留学を経験すれば、帰国後に仕事の幅が広がるのは間違いありません。日本で再就職をするなら、調剤薬局や病院だけでなく「CRO」での仕事という選択肢もあります。CROとは、医薬品開発のため必要となる「臨床開発」を、受託・代行して実施する企業のこと。海外と協力して業務を進めるケースが多く、高い英語力が求められます。

 また、外国人が多く住む地域の調剤薬局でも、英語力のある薬剤師は引く手あまたです。服薬指導をする際、薬の効果や副作用を英語で正確に伝えられるスキルは、非常に重宝されるでしょう。そのほか、製薬会社や医療機器会社においても、グローバル化が進む現在、語学力の高さは大きな武器となります。

 このように、薬剤師は英語力があるかどうかで、選べる仕事の幅がグッと広がるのは間違いありません。グローバル化が進むこの時代に、海外留学で得た知識はキャリアアップの重要な柱となるでしょう。