日本は少子高齢化がますます深刻になり、在宅医療の需要は今後も増えていくと予想されます。そんな中で注目されているのが、「かかりつけ薬剤師」です。かかりつけ薬剤師は、通常の薬剤師とどう違うのでしょうか。かかりつけ薬剤師になるための条件や、気になる業務内容、年収について見ていきましょう。
「かかりつけ薬剤師」とは
かかりつけ薬剤師は、2016年4月に「かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料」が新設されたことをきっかけに生まれたものです。主な業務には、併用薬・OTC医薬品を含めて患者が使用している薬を一元的かつ継続的に把握・管理し、総合的な健康指導を行うことや、在宅訪問や電話での相談に対応し、患者のニーズに沿ったサポートをすることがあります。
かかりつけ薬剤師は患者が指名して選ぶので、患者にとっては「自身の体調をよく理解している薬剤師が常に身近にいる」という安心感が得られます。高齢者や体が不自由な患者は、調剤薬局に通うのも一苦労であるため、在宅訪問でアドバイスしてくれるかかりつけ薬剤師の存在は、今後ますます重要になっていくでしょう。
また、かかりつけ薬剤師は薬局が閉店している時間帯も対応を行うため、時代に即した新しい薬剤師の在り方としても注目されています。
かかりつけ薬剤師になるための5つの要件
かかりつけ薬剤師になるには、以下の条件を満たす必要があります。
(1)3年以上の薬局勤務経験
かかりつけ薬剤師になるには3年以上の薬局勤務経験が必要です。ただし対象となるのは「保険調剤を取り扱う薬局での実務」に限られ、病院での勤務は最大1年とカウントされます。今まで務めた職場での勤務年数をよく確認しましょう。
(2)同一薬局に週32時間以上勤務している
基本的には同一薬局に週32時間以上勤務していることが必須ですが、育児や介護による時短勤務をしている場合は、週24時間以上で週4日以上の勤務でも認められます。
(3)当該薬局に12カ月以上在籍している
現在週32時間以上勤務している薬局に、連続して12カ月以上在籍していることも条件のひとつ。通算の期間ではないのでご注意ください。
(4)研修認定薬剤師(認定薬剤師)を取得している
研修認定薬剤師(認定薬剤師)の資格を取るには、高いスキルと豊富な経験が不可欠です。また認定薬剤師の資格は更新制であるため、持っているだけで常に最新の研究・学習を行なっていることを証明します。
(5)医療に関わる地域活動の取り組みに参加している
かかりつけ薬剤師は、地域の医療事情に精通することも必要です。「企業が主催する勉強会・研修」は地域活動に含まないので、自ら積極的に地域活動に参加しましょう。
このように、かかりつけ薬剤師になるための条件は多いですが、薬剤師としてのキャリアを積めば、この中のほとんどはクリアできます。やる気さえあれば、誰でも目指せるのでぜひ挑戦してみましょう。
かかりつけ薬剤師の年収、勤務時間は?
かかりつけ薬剤師には高いスキルが求められるため、通常の薬剤師より社内での評価が高くなることもあります。ただし、患者から指名を受けて初めてかかりつけ薬剤師としての実務に当たることができるため、まずは患者との信頼関係を築く必要があるでしょう。患者と密なコミュニケーションを取り薬剤師として評価されれば、指名してくれる患者が増えてさらなる年収アップにつながります。
「かかりつけ薬剤師指導料」は、通常の「薬剤服用管理指導料」よりも点数が高いので、薬局への貢献が認められれば年収アップが期待できるでしょう。また、現在はかかりつけ薬剤師が不足しているので、その点でも高い年収が期待できます。
ただし、かかりつけ薬剤師は指名してくれた患者について、医療面で全般的なサポートをするのが仕事です。深夜や休日でも要請があれば対応しなければなりません。極端に言えば、24時間勤務といっても過言ではないので、その点も理解しましょう。
かかりつけ薬剤師を目指すなら
かかりつけ薬剤師はスタートして数年の新しい制度なので、まだまだ不足しているのが実情です。そのため、かかりつけ薬剤師としてのスタートを早めに切ることが、今後のキャリアにつながります。薬局によっては、かかりつけ薬剤師認定支援制度を設けている場合もあるので、そういった薬局に転職することでキャリアアップを図るのも良いでしょう。
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- かかりつけ薬剤師になるための必要要件まとめ
- 保険薬局での3年以上の勤務経験
- 同一薬局での週32時間以上の勤務
- 当該薬局での連続12カ月以上の勤務
- 研修認定薬剤師(認定薬剤師)の取得
- 医療に関わる地域の取り組みへの参加