薬歴は患者さんが安心して薬を服用するためになくてはならない記録であり、その記入は調剤や監査と同様、薬剤師にとって必須の業務です。忙しい薬局では薬歴を書く時間がなかなか取れないこともありますが、どんなときも正確かつ効率よく記録するコツを身につけて精度の高い薬歴管理を行いましょう。

薬歴は「誰が見てもわかるように書く」が原則

 薬剤服用歴管理簿(以下:薬歴)は、患者の服薬状況や体調の変化、それに対する指導内容などの情報を収集し、充実した服薬指導を行うために記入するものです。記載すべき事項には服薬状況、残薬情報、服用中の体調、併用薬、既往歴、他科受診の有無、副作用、飲食物(薬剤との相互作用)、後発品の使用に関する意向、服薬指導の要点などがありますが、その内容は「誰が見てもわかるもの」でなければ意味がありません。

 薬歴を記入する際のルールは薬局ごとに異なる場合もありますが、一般的にはSOAP形式という書式に基づいて記載します。各項目に記入すべき内容は以下の通りです。

  • (1)Subjective data(主観的情報):患者さんの話した自覚症状や訴えなど
  • (2)Objective data(客観的情報):処方内容の他、血圧や検査値など
  • (3)Assessment(判断・評価):(1)と(2)の内容から得られる薬剤師としての判断、意見(相互作用・副作用)など
  • (4)Plan(計画):服薬指導内容など

薬歴を書くときのポイント・注意点

 薬歴には患者とのやり取りをそのまま書くのではなく、箇条書きで簡潔に書くようにするのが記入時間短縮のポイントです。各項目の記入例と注意点を見ていきましょう。

主観的な情報(S)

記入例:「すぐに寝付けないので、寝る前にアルコールを少々飲んでいる。」「レンドルミン服用後、スマホをいじっている。」など

ポイント:患者の訴えや自覚症状を短い文章でまとめます。

客観的な情報(O)

記入例:「処方内容は前回と同じ」「レンドルミン処方追加」

ポイント:前回と今回の処方内容の比較や、薬の変更などの処方内容を軸に、客観的な情報を加えていきます。血圧や検査値など聞き取った場合も記入しましょう。

薬剤師としての判断・評価(A)

記入例:「アルコールとの併用により副作用増強か」「睡眠薬服用後にスマホをいじることで、効果減弱させている可能性あり」など

ポイント:患者の情報や状況から何が問題であるかを考察し記入します。患者の理解度や達成度も記載できるとその後の薬歴管理がスムーズです。

問題に関する今後の計画(P)

記入例:「レンドルミンとアルコールの併用でふらつきなどの副作用が増強されているおそれがあるので、アルコールは中止するよう伝えた。」「睡眠薬服用後はスマホなどは触らず、部屋を暗くして寝るよう指導した。」

ポイント:S、O、Aによって明らかになった問題を解決するための具体的な指導内容を記入します。

薬歴記入を楽にするヒアリングのコツ

 患者から体調や服薬情報を聞く際に十分に情報が得られないと、薬歴の記入で苦戦してしまいます。患者に薬を渡す際には「何か変わったことはありませんか?」と漠然と質問するのではなく、「前回新しく処方した薬を飲んで、吐き気が出ることはありませんでしたか?」と的を絞って聞きましょう。患者が「はい」か「いいえ」と答えられる質問をすれば、適切なアドバイスが可能になり薬歴も書きやすくなります。

 薬の処方内容に変化もなく、数値データ(血圧、生理学的検査、採血などの検査結果)もない場合は、生活の変化(運動量や生活リズム)、薬の保管方法・破棄方法、飲み忘れた場合の対応や残薬の有無などを聞き、患者の情報を引き出しましょう。「最近ジムに通い始めた」「動物を飼い始めた」など雑談に思える内容も、アレルギーや副作用の危険がある場合は薬歴に書き残したい部分です。

薬歴を速く書くために

 薬歴の記入がスムーズに終えられないという方はまず、薬をお渡しする際のヒアリングを工夫してみましょう。質問の仕方を工夫し必要な内容をピンポイントで聞き出すことが、薬歴記入のポイントです。また、細かい工夫になりますが、記入の際は略語(副作用=SEなど)を積極的に使う、電子薬歴の場合はよく使う単語・文章をPCに登録しておくなどで入力の効率を上げましょう。

 薬歴記入は慣れれば自然とスピードアップするものですが、それでも慢性的な残業が発生する場合には転職も視野に入れましょう。薬剤師の転職は、キャリアカウンセラー全員が薬剤師資格を持つファーマリンクまでお気軽にご相談ください。