高時給でシフトの融通も利きやすい派遣薬剤師は、仕事と子育てを両立したい女性に人気の働き方です。しかし、派遣薬剤師は正社員薬剤師と比べ福利厚生などのサポートが少ないので、育休を取れるかどうかは派遣元との契約や交渉次第といえるでしょう。どんな条件を満たせば、派遣でも育休を取得できるのでしょうか?
育休とは
労働者が出産の前後に取れる休暇には、産前・産後休暇と育児休暇の2種類があります。
産前・産後休暇は労働基準法第65条で定められたもので、正社員や派遣などの雇用形態を問わず、全ての女性に取得が認められています。産前休業は本人が請求すれば出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から取得できますが、出産日の翌日から8週間の産後休業については、本人の請求の有無に関わらず、雇用主が必ず与えなければなりません。
育児休暇は平成29年に改正された育児・介護休業法第5条で定められたものです。産後休業の終了後、子が1歳になる誕生日の前日まで(保育所に入所できないなどの理由がある場合は最長で2年)取ることができます。ただし、期間を定めて雇用される派遣薬剤師の場合は、以下の2つを満たすことが育休取得の条件になります。
同一事業主による一年以上の継続雇用
同じ事業主に1年以上引き続いて雇用されている必要があります。年末年始や週休日が空いてしまっていたとしても雇用が引き続いていれば問題ありません。派遣社員の場合、派遣先は関係なく、同じ派遣元で1年以上雇用されていれば雇用が継続されているといえます。
子どもの1歳の誕生日以降も雇用されている
子どもが1歳6か月に達する日以降も、その労働契約(労働契約が更新される場合は、更新後のもの)が継続していることが明らかでなければなりません。労働契約の更新について書面があればその通りになりますが、口頭で示されていたり、書面に「業績に応じて契約終了時に判断する」といったように書かれていた場合も「可能性がある」と判断することができます。
子供の2歳の誕生日前々日までに雇用契約が満了した場合、契約が更新されるかどうかという点も問題となります。労働契約の更新回数や期間に上限がなければ問題はないのですが、更新回数や期間の上限が決められている場合は注意が必要です。契約期間終了日が、1歳の誕生日の前日から2歳の誕生日の前々日までの間にある場合、「更新されないことが明らか」と見なされてしまいます。
派遣薬剤師は育休が取りにくい
派遣薬剤師はあらかじめ「契約期間は〇年〇月から○年○月まで」と期間を定めて契約しているので、1年以上同じ派遣会社に雇用されているという条件を満たしても、子が1歳 6 か月になる前に労働契約が切れてしまう場合は、育休の取得が認められません。育休取得を考えているなら、育休中も労働者との雇用状態を維持してくれる派遣会社を選びましょう。
取得の条件をクリアしても、仕事に穴を空けることには精神的なプレッシャーが伴います。お腹が大きい状態での勤務は周りの理解と協力が不可欠なので、派遣薬剤師としての育休取得が職場で好意的に受け取られていない場合は、居心地の悪さを感じることがあるかもしれません。条件面と、精神的な負担の2つを考慮すると、派遣薬剤師は正社員薬剤師より育休が取りにくいといえるでしょう。
派遣薬剤師が育休を取るときの注意点
前述の通り、一定の条件を満たせば派遣薬剤師でも育休を取ることができますが、実際の育休の取得率は派遣会社によって異なります。その際に確認すべきポイントは、実際に今までに育児休暇制度を使って休暇を取得した人がいる実績のある職場かどうかということです。職場の雰囲気から取得を諦めたり復職を断念してしまったりする人もいるかもしれませんので、派遣社員の育児休暇取得者数を把握することは大切です。また取得できる場合でも、休暇期間中の給与の支払いについては会社によって違うため、こちらも事前に確認しておくようにしましょう。
派遣会社には早めに報告を
体調不良で出勤が不規則になり、業務に支障が出る場合は、派遣元は代替スタッフを派遣するなどの対処を考えなくてはなりません。母子手帳が交付され、出産予定日がわかったら派遣会社に妊娠を報告し、仕事を引き継ぐ準備に取り掛かりましょう。
育休明けは派遣先が変わる場合も
育休前の勤務先に復帰できるかどうかは派遣先の状況次第です。派遣先が変わる場合は、育児をしながら慣れない職場や業務につかなければならないことも頭に入れておきましょう。働く環境を変えたくない場合は、勤務先に直接雇用されるパート薬剤師として育休を取る方法がありますが、安定的に働けるパートは人気が高いため、募集の枠が埋まりやすい傾向があります。
確実に育休を取得するなら正社員を目指すのが近道
育休の取得を考えるなら、条件に合った派遣会社を探すより、正社員として1年以上働く方が制度的にも精神的にも負担が少ないかもしれません。薬剤師業界は女性の割合が多いので、正社員の子育て支援に力を入れている職場も多くあります。派遣薬剤師にこだわらず、正社員の求人も探してみてはいかがでしょうか?
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