気持ちよく仕事をするために、職場の人間関係が良好であることは大切です。人間関係が悪化すると、仕事に行くモチベーションが保てず「疲れた」と感じてしまうでしょう。人間関係の悩みは、薬剤師の転職理由でも多いものです。
薬剤師が働く職場はさまざまで、関わる対象や人数の違いによって人間関係の悩みも異なります。今回は、「人間関係に疲れた」と感じる職場別の理由や人間関係の悩みの対処法、転職を視野に入れる際のポイントを解説します。
【職場別】薬剤師が人間関係に悩む理由
薬剤師の職場は、調剤薬局や病院、ドラッグストア、製薬企業とさまざまで、人間関係に悩む理由も勤務する業態によって異なります。人間関係に悩む職場別の理由を知れば、自分が抱えている悩みを解消するためのヒントが見つかるでしょう。
また、転職を考えるなら、それぞれの職場で起こりうる人間関係の悩みを知っておくと、職場選びの参考になります。ここからは、職場別に薬剤師が人間関係に悩む理由を詳しくみていきましょう。
調剤薬局
調剤薬局は、長時間同じ空間で過ごすことでスタッフの関係が密になり、相手の欠点が目につきやすい職場です。狭い空間の中で限られたスタッフと業務を行うため、苦手な人と長時間一緒に過ごすことも多くなります。
さらに、働くスペースが限られており、関係がよくない人との接触を減らしにくいぶん、気持ちを落ち着かせて切り替える時間が十分に取れないケースも薬局によってはあるようです。また、薬剤師と医療事務の間で、待遇面の不満やトラブルが発生することもあります。1度悪化した人間関係のトラブルが長期化しやすいため、注意しましょう。
その他、調剤薬局での業務はスピードが重視されるうえに、ミスが許されないという緊張感が、余計にストレスを招く原因となることもあるようです。
病院
病院は、薬剤師以外にも医師や看護師などの他職種スタッフとのつながりが原因で、「人間関係に疲れた」と感じやすいでしょう。なぜなら、チーム医療にやりがいを感じる一方で、違う立場のスタッフとのやりとりで細かい気遣いが必要になるためです。
病棟へ服薬指導に行く際には、他職種の業務との兼ね合いを考慮する必要があります。しかし、どんなに配慮してもタイミングが合わず、他職種間で不満が生まれることもあるでしょう。
チーム医療でさまざまな業種が関わる際に職種によって主張が異なり、薬剤師が板挟みになるケースもみられます。さらに、病院は基本的に転勤や異動がなく、他の業態のように転勤や異動による環境の変化が期待できないことも、人間関係の悩みを解消しにくい理由です。
ドラッグストア
ドラッグストアでは、価値観の違いからスタッフ間での意見の相違が生まれ、人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります。ドラッグストアは薬剤師以外にも販売スタッフや美容部員などさまざまな職種が働く職場で、年齢や経歴、雇用形態が人それぞれ異なるためです。
また、薬剤師の業務外の仕事を頼まれて、「薬剤師でなくともできる仕事なのに、なぜ自分がやらないといけないのか」という不満が溜まるケースもみられます。薬剤師以外のスタッフに専門性を理解してもらえないことが、強いストレスに発展することもあるでしょう。
他にも、ドラッグストアは接客業の要素が強いため、店舗の利用者との人間関係に悩む事例もあります。
製薬企業
製薬企業で働く職種の中でも、人間関係の悩みが生まれやすいのがMRです。MRは医療機関に出向き、自社製品の営業や情報提供、収集を行います。そのため、自社の職員との関係だけでなく、医師や薬剤師などのさまざまな職種と関わることが多くあります。
相手の考え方や価値観に合わせる場面が多く、ストレスが溜まりがちです。人間関係が営業成績に影響を及ぼす傾向にあるため、円滑な人間関係を保つ努力が欠かせません。ときには自分の気持ちを押し殺すことになるため、苦しさが増すこともあるでしょう。
人間関係以外に薬剤師が抱える仕事の悩みとは
職場の人間関係以外にも、仕事の悩みを抱える薬剤師は多いものです。待遇面や労働環境の悪さに不満があるとモチベーションが保てず、仕事に行くのがつらくなってしまいます。
給料や働く環境の悪さはすぐに解決されないことが多いため、悩みが長期化することもあるでしょう。ここでは、人間関係以外に薬剤師が抱えやすい仕事の悩みを詳しく解説します。
待遇面への不満
給与や待遇面への不満があると「今の職場で働くことがつらい」と感じがちです。薬剤師は人の命や健康に関わる、ミスが許されない緊張感のある仕事のため、見合った報酬を得られないと感じることもあります。
また、少ない人数で業務を遂行している場合、大きな業務負荷に対して十分な給料を得られないと、モチベーションを保てずに「仕事に疲れた」と感じるのも無理はありません。
いまだに薬剤師が不足している地域も少なくないため、年収に不満がある薬剤師は転職による収入アップを考えるきっかけになります。
労働環境の悪さ
残業や休日出勤が多い、人員が少なくて仕事が忙しいなどの、労働環境の悪さに悩む人は多くいます。事前の相談もなく残業や休日出勤を求められて、職場環境への不満が溜まるケースもあるでしょう。出勤時間が長いとプライベートの時間を確保できず、心身の疲れが溜まることでモチベーションに悪影響が出てしまいます。
また、異動や転勤が多い職種では、新しい仕事内容や人間関係に対応するのにも体力や気力が必要です。新たな環境でストレスや疲労が溜まり、体調を崩すことも考えられます。
人間関係の悩みへの対処法
上司や同僚、身近な人との対話や、自分から苦手な人に歩み寄る姿勢によって、人間関係の悩みが解消する場合があります。まずは現状を改善できないか慎重に検討しましょう。
もし自分の言動を変えたり、周りの人からのアドバイスをもとに行動したりしても、つらい状況が改善しない場合は、異動や転職も選択肢の一つになりえます。ここからは、人間関係の悩みへの対処法を具体的に解説します。
上司または同僚に相談する
上司や同僚に相談することで、悩みを解消するためのアドバイスをもらえる可能性があります。職場が同じなら共通の悩みを抱えていることが多く、他の人の対処法が参考になることもあるでしょう。関係がよくない相手との関係修復を、同僚にサポートしてもらうのもよいかもしれません。
また、上司に人間関係の悩みを打ち明け、仕事内容や部署を調整してもらえれば、苦手な人との接触を最小限まで減らせることも考えられます。1人で悩みを抱え込まずに、信頼できる人に打ち明けることも悩み解決の有効な手段です。
身近な人に話を聞いてもらう
家族や友人などの身近な人に話を聞いてもらうと、頭が整理できるとともに心が軽くなります。話に共感してもらったり、今までの頑張りを認めてもらったりすると「自分には味方がいる」と安心できるでしょう。
また、外部の客観的な視点から人間関係のアドバイスを得やすく、悪化した人間関係を見直すきっかけになることもあります。上司や同僚に相談するのが難しい場合は、あなたの人柄をよく知る身近な人に悩みを打ち明けることから始めましょう。
自分から相手に歩み寄る意識をもつ
苦手な相手に対して自分から積極的に歩み寄る意識をもつことで、人間関係が改善する可能性があります。表情や声色、言動で相手に苦手意識が伝わってしまうと、コミュニケーションが取りにくくなるものです。
相手の長所を探したり、仕事以外の話題で相手の話を聞いたりすることで、お互いを深く知る機会が得られることもあります。もし話題が見つからない場合は、日々の挨拶や業務中に感謝を伝えることを欠かさないように心がけましょう。
異動や転職を検討する
上記の方法を試しても人間関係の悩みが解消しない場合は、異動や転職を検討しましょう。人間関係がつらい職場にい続けて疲弊するよりも、心身の健康を保ちながら長く働くことが大切です。
新しい環境で人間関係をリセットすることで、前向きに働ける可能性があります。ただし、人間関係のトラブルはどの職場でも発生しうるものです。同じトラブルや悩み事をくり返さないために、人間関係の悩みへの対処法を身につけておきましょう。
人間関係を理由にした転職を成功させるためのポイント
人間関係の悩みから転職を焦ると、「今の職場でなければどこでもよい」と冷静な判断ができなくなることもあります。同じ悩みで苦しまないために、理想の働き方や職場について考えたり、転職先の情報を集めたりする時間を作ってください。
また、今後どのような薬剤師になりたいかを考えることも、職場選びだけでなく面接対策に活きてくるでしょう。人間関係を理由にした転職を成功させるために、ここから紹介するポイントを押さえてください。
面接時にはポジティブな転職理由を伝える
面接時には人間関係の悩みで転職したい旨ではなく、ポジティブな理由を伝えましょう。人間関係の悩みを転職理由として伝えると、「転職しても、また人間関係が理由で退職してしまうのではないか」という不安を面接先に与えるため、できれば避けたいものです。
人間関係の悩みが転職のきっかけでも、「スキルアップして患者に貢献したい」「新薬を患者に届ける仕事に携わりたい」などといった、ポジティブな転職理由を用意しましょう。
これから働くモチベーションになるような前向きな理由を見つけることで、転職で志望動機を書く際や面接を受ける際に、採用担当者に熱意が伝わりやすくなりますよ。
見学で職場の雰囲気を確認する
転職を希望する職場に見学に行き、職場の雰囲気を確認しましょう。求人広告で「アットホームな職場」などと書かれていても、実際の内部事情はわかりません。同じ法人でも店舗ごとに雰囲気が異なり、求人情報と異なる印象を受けることもあります。
実際に働いている様子を見学すると、職場で働くイメージがつきやすくなるでしょう。雰囲気を掴むには、職場が忙しい時間帯に見学するのがおすすめです。もし忙しい時間帯の見学が難しい場合は、患者として来局してみてはいかがでしょうか。
また、役職の高い人と話すだけでなく、他のスタッフにも話を聞いてみましょう。その職場で働く人の本音は、転職するかどうかの判断材料になります。転職先でも人間関係の悩みが生まれてしまうことを防ぐためにも、事前にしっかり情報収集してください。
職場の人間関係に疲れたら転職も視野に入れてみよう
薬剤師は業種によって、職場の人間関係の悩みが生まれる理由は異なります。職種別の人間関係の特徴を知ると、自分自身の悩みを解消するヒントが見つかるかもしれません。
職場の人間関係に疲れたら、まずは環境を改善できないか上司や同僚に相談したり、苦手な相手に歩み寄ったりするといった工夫をしましょう。それでも改善がみられないときは、他の職場への異動や転職を視野に入れるのがおすすめです。
転職を希望する場合、人間関係のトラブルを理由にすると、採用担当者にネガティブな印象を抱かれる可能性があります。人間関係の悩みが転職のきっかけでも、キャリアアップや理想の薬剤師像などの、今後のモチベーションにつながる転職理由を見つけてください。
