薬剤師は飽和状態?これからの薬剤師に求められるスキルを解説

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薬剤師は飽和状態?これからの薬剤師に求められるスキルを解説

2024年6月21日更新

以前より「薬剤師は飽和状態になる」といわれてきましたが、2024年時点では、求人も多く、まだ薬剤師過多とはいえません。ですが資格があれば長く働ける職種のため、いずれは飽和状態になる可能性も想定されます。本記事では、薬剤師の現在の状況から業種別の将来性、今後求められるスキルについて解説します。薬剤師や薬剤師を志す方はぜひご覧ください。

薬剤師は飽和状態?現状と今後の動向

近年薬剤師の数が増加し、一部では「飽和状態」になっているともいわれています。そのような中でも薬剤師は一定の需要がある仕事であるほか、仕事内容や地域によってはまだまだ不足する状況です。また、医療の進歩や高齢化社会の進行に伴い、薬剤師の役割も変化し続けています。

反面、将来的には需給バランスが崩れ、薬剤師過多になりえる試算があるのも事実です。薬剤師の現状はどのようなものか、また今後どのような動向が想定されるのでしょうか。

薬剤師は需要のある仕事

需給バランスを見た際に、2024年2月時点、薬剤師は飽和状態ではありません。薬剤師数が飽和しているかは、求職者数に対する求人数の割合を示す有効求人倍率より読み取れます。

厚生労働省の令和6年2月分一般職業紹介状況(パート含む)によると、医師・薬剤師等の有効求人倍率は2.34倍です。同調査における同時期かつすべての職種での有効求人倍率は1.20倍のため、薬剤師は有効求人倍率が高く、売り手市場であるといえます。しかし、有効求人倍率を過去にさかのぼってみると違った面が見えてきます。

年月 2024年2月 2023年3月 2022年3月 2021年3月 2020年3月 2019年3月 2018年3月
有効求人倍率 2.34倍 2.17倍 2.03倍 2.04倍 3.34倍 4.55倍 5.35倍

コロナ禍の影響があるとしても、有効求人倍率が以前よりも低下しているのがわかります。売り手市場ではありつつも、以前のような「薬剤師という資格があれば就職先が見つかる」状況から「キャリアや人柄も重視される」状況にシフトしていく可能性はあるでしょう。

参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年2月分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和3年3月分及び令和2年度分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年3月分及び令和元年度分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(平成31年3月分及び平成30年度分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(平成30年3月分及び平成29年度分)について」

薬剤師は地域により不足傾向にある

薬剤師の需要と供給は病院薬剤師と薬局薬剤師、地域によって大きく異なります。厚生労働省の偏在指標調査によれば、すべての都道府県で医療需要に対する病院薬剤師数が充足していない状況が明らかになっています。特に青森県、秋田県、山形県では、目標を大きく下回る状況です。

一方、薬局薬剤師の偏在指標は全国ベースで1.08と目標を上回っています。主に東京都や愛知県などの都市部は充足されているものの、福井県、富山県、鹿児島県など地方では偏在指標が目標を下回り薬剤師不足の状態です。

特に人口が少なく、高齢化が進んでいる地域や、医療資源が乏しい地域では、薬剤師の不足が顕著になっています。これらの地域では、1人の薬剤師が支える高齢者の数が多く、薬剤師の負担が増大しています。

参考:厚生労働省「都道府県別薬剤師偏在指標」

2045年には2.4万人以上の薬剤師が過剰になる可能性も

厚生労働省の需給調査の推計によれば、2045年には最大で12.6万人の薬剤師が過剰になる可能性が示されています。2020年段階での薬剤師数は32.5万人ですが、2045年の薬剤師数は43.2万人~45.8万人と推計されています。一方、需要は薬剤師業務が現在と同様と仮定した場合は33.2万人、業務の変動要因を考慮した場合の推計は40.8万人です。

単純に計算すると、2045年段階で2.4万人?12.6万人が供給過多になる可能性があります。この推計では薬剤師が担当する業務が増え、必要とされる薬剤師が増えると仮定していますが、実際のところは増える可能性だけでなく、減る可能性も想定されます。対人業務や在宅業務、OTC医薬品販売、健康相談業務など薬剤師業務の拡大が薬剤師の需要に大きく関わってくると考えられるでしょう。

参考:薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会とりまとめ(概要)

将来的な薬剤師の飽和が懸念される理由

上述したように、薬剤師が旧来のような対物業務を中心とした業務を続けた場合、将来的には大きく供給過多になると推測されています。ただし、厚生労働省の「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ(提言概要)」を基に対人業務への移行が推進されることから、状況は変わるかもしれません。

実際に診療報酬改定による対人業務への誘導や業務拡大が実施されていますが、それでも将来的に薬剤師は飽和状態になることが懸念されています。その理由として調剤補助の導入や調剤業務の機械化・AI化、診療報酬改定の影響などが挙げられるでしょう。それぞれについて紹介します。

参考:厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 とりまとめ」

調剤業務の機械化

1つめの理由が調剤業務の機械化です。一包化や水剤の調剤、軟膏の混合を行う機器などはすでに薬局で導入されつつあり、業務効率化が図られています。それに加えて、近年では一包化監査機器や薬の自動払い出し機、散薬秤量調剤のすべてを行う散薬調剤ロボットが登場しました。時代の流れとともに機械も進化を遂げ、ほとんどの調剤業務を自動化することが可能となりました。

調剤業務の自動化により、「患者様の待ち時間が減る」「人為的なミスが防げる」といったメリットもあるものの、薬剤師としての業務は減少するでしょう。その分を対人業務にあて、患者様の気持ちに寄り添いニーズに応える業務に注力できるともいえます。薬剤師の仕事すべてを機械に置き換えることは困難ですが、全体の業務量は減少し必要な薬剤師数が減少する可能性があります。

調剤補助の導入

調剤補助という概念は昔からありましたが、長年グレーゾーンとして扱われていました。

しかし、2019年に通知された「調剤業務のあり方について」により、薬剤師以外が携われる業務範囲が明確に示されました。たとえば、ピッキング業務や医薬品の棚入れ、お薬カレンダーや院内の配薬カートに調剤済みの薬剤を入れるなどの業務は、薬剤師の適切な管理下で薬剤師以外も従事できます。

この目的は、調剤補助を活用して薬剤師の業務負担を軽減し、より対人業務に集中してもらうという意図にほかなりません。この状況は言い方を変えれば、薬剤師を雇用する代わりに調剤補助を雇用するという選択肢ができ、必要な薬剤師が減少する可能性があります。

参考:厚生労働省「調剤業務のあり方について」

調剤報酬改定や薬価ダウンの影響

2年に一度の診療報酬改定(薬価に関しては1年に一度)では、2010年以降本体部分はプラス改定、薬価部分はマイナス改定が続いています。しかし、本体部分のプラス改定についても調剤部門は2022年がプラス0.08%、2024年はプラス0.16%とわずかなプラスになっています。

また、2024年の改定は門前薬局や大型チェーン薬局は調材料が引き下げられる、調剤技術料が引き下げられるなど厳しい内容でした。また、薬価は毎回マイナス改定が続いており、資産の減少と薬価差益の減少で薬局が得られる利益は減少しています。

その結果、薬剤師の雇用が余裕を持ったものではなくなる可能性があります。これまで余裕を持って薬局を雇用していた薬局が減少する、上述した調剤補助に切り替えるなどにより勤務薬剤師数が減少することも想定されるでしょう。

参考:厚生労働省「令和4年度診療報酬改定について」
参考:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定について」

投薬対象者数の減少

厚生労働省では2021年4月、「薬剤師の需給推計」(案)にて、処方箋に関する作業量が将来的に一定であるという前提の下での薬局薬剤師の需要予測と、さまざまな変数を考慮に入れた予測が示されました。投薬対象となる患者数については、2020年時点で11.3億人でしたが、25年後の2045年には10.9億人にまで減少すると予測されています。これは、2042年以降に高齢者人口が減少するという予測(国立社会保障人口問題研究所の将来予測)と一致しています。

また、処方箋の枚数は分業率の上限を85%とした場合、2020年の8.6億枚から2035年にはピークの9.5億枚に達し、2045年には9.3億枚になると予測されています。これは、高齢者人口が当面増加するものの、その後は減少するという傾向が反映されています。

現在の医薬分業率推計も令和4年度で76.6%と、厚生労働省の上限値に近づいているため新たな薬局の開設は多くなく、薬局の大きな増加は見込まれないでしょう。上述の薬剤師の供給推計では薬剤師は増え続けるため、相対的に処方箋の増加傾向と伴っておらず薬剤師が飽和する可能性があります。

参考:厚生労働省「薬剤師の需給推計(案)」
参考:日本薬剤師会「医薬分業進捗状況」

【業種別】薬剤師の需要や将来性

将来、薬剤師が飽和する可能性があるとお話してきました。その状況下でも現在薬剤師が不足し需要がある業種から、需要が減少していくであろう業種までさまざまであり、薬剤師の将来性は業種により大きく異なります。ここでは薬剤師が主に勤務している病院、調剤薬局、ドラッグストア、製薬会社の薬剤師の将来見通しについて詳しくご紹介します。

薬剤師の将来性についてはこちらの記事も参考にしてください。

内部リンク:薬剤師の将来性! 雇用が減っても生き残るための働き方とは

病院

病院薬剤師の将来は、比較的明るいといえます。新しい医療技術に直接触れる機会があり、薬学生や薬剤師にとって病院勤務は魅力的な選択肢です。専門薬剤師の資格取得ができる環境が整っているため、がん専門薬剤師や感染症専門薬剤師などの専門薬剤師の取得が可能です。

専門知識を持つ薬剤師の価値は上昇しており、2012年に薬剤師が病棟業務を行うことで算定できる「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。これにより、病院薬剤師の需要は増大し、2022年の薬剤師の数は、2018年と比べて4.5%増の5万6585人となっています。

しかし、病院薬剤師は他の職種と比較して給与が低めであることや、当直業務なども存在するため、薬剤師の不足は続いている状況です。

参考:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
参考:厚生労働省「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」

調剤薬局

上述の通り、機械化も進み、AIが業務を担う可能性を考慮すると、薬剤師が行う対物業務は減る方向に向かっていると考えられます。ですが、患者に対して積極的にコミュニケーションを取り、薬剤師としての職能を拡大するよう働けると考えれば、薬剤師にとってプラスです。

また、高齢化社会により在宅医療がさらに広がります。在宅医療では薬剤師の職能が発揮できる機会のため、今後の薬剤師業務を左右する鍵といえるでしょう。

厚生労働省も2019年に「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」と分類をすると決定したこともあり、在宅業務などを行う地域密着の薬局と専門性の高い薬局のニーズが高まると考えられます。

ドラッグストア

ドラッグストア勤務の薬剤師の未来は当面は明るいでしょう。日本チェーンドラッグストア協会の調査によると、ドラッグストアの店舗数は2019年度から2022年度の3年間で2,000店舗増と、年々右肩上がりに増加しています。

OTC医薬品の売り上げは増加傾向、調剤医薬品に至っては調剤医薬品販売額が2022年度は2018年度より1.75倍と増加しています。処方箋調剤などは、登録販売者は従事できないため、一定数の薬剤師の求人が見込まれ当面需要は安定するでしょう。

また、24時間営業の店舗もあり、需要は高いと見込まれるため、薬剤師過多になりにくい職場です。しかしながら、ドラッグストアの飽和が起きる可能性や、競争の激化によりドラッグストアの増加が鈍化する可能性は想定しておく必要があります。

参考:薬事日報「【JACDS】DgS総売上高は8.7兆円に-22年度、伸び率が鈍化」
参考:日本チェーンドラッグストア協会 会報誌No.199
参考:経済産業省 商業動態統計調査「ドラッグストア商品別販売額等及び前年(度、同期、同月)比」

製薬会社

製薬企業に関しては厳しい状況が続くでしょう。製薬会社関連の勤務者の数は2016年から2022年の6年間で約5,000人減っています。

その大きな原因はMR人数が減っていることです。2016年時点では6.3万人いたMR数が、2023年3月時点で4.9万人と5万人を切りました。

MRが担う役割は変わらないものの、情報入手手段が増えたことや、Web講演会や動画コンテンツの充実など医療関係者に対する情報提供チャネルが多様化したことも、MR数減少の理由と考えられます。また、ジェネリック医薬品の浸透により宣伝効果を得られない商品が増えたことも影響しているでしょう。

参考:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
参考:厚生労働省「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」
参考:MR認定センター「MR白書」

今後の薬剤師に求められるスキル

今後薬剤師に求められるスキルは大きく3つあります。

1つ目はコミュニケーション能力です。業務がどんなに機械化したとしても、患者さんとのコミュニケーションは人間にしかできません。コミュニケーション能力を磨き患者さんから信頼される薬剤師であることは、将来薬剤師として生き残るために必須でしょう。

また、患者さんだけでなく医師や看護師、ケアマネージャーなどとのコミュニケーションは地域連携を担う一員としても欠かせません。

2つ目は専門スキルを身に付けることです。研修認定薬剤師や、がん薬物療法認定薬剤師、実務実習指導薬剤師などの取得を検討してみましょう。

研修認定薬剤師の資格を持っていないと算定できない加算もあるため、調剤薬局薬剤師には必須です。また、がん認定薬剤師は大病院前で需要が高く、実務実習指導薬剤師は学生実習を受け入れる薬局には必須となるため、これらの資格を持っていると活躍できる場が広がります。

3つ目は地域密着型の薬剤師スキルの取得です。薬剤師として地域イベントへ参加して地域との人間関係のつながりを構築したり、患者宅への訪問薬剤師として知識・スキル・経験を高めたりするといいでしょう。

今後は、薬局の中だけではなく、積極的に外に出て情報を発信することが求められます。自ら地域住民と関わりを持ち、地域住民の正しい理解ができるように情報発信するとともに、病気の予防や健康づくりの推進といったセルフメディケーションを促していきましょう。

薬剤師のスキルアップについては、以下の記事を参考にしてください。

内部リンク:現役薬剤師のスキルアップ! 第一線で活躍するための勉強法

飽和状態といわれる将来に向け薬剤師のスキルを磨こう

薬剤師は以前より飽和しているといわれ続けてきました。2045年には現状のままの業務の場合では最大12.6万人、対人業務を拡大したとしても2.4万人が供給過剰という予測も出ています。機械化や調剤補助の確立、診療報酬改定により今後も厳しい状態が続くのは容易に想定され、すでに都市部の調剤薬局では過剰ともいえる状況です。

将来性においても明るいといえるのは病院のみで、調剤薬局、製薬会社は厳しいと想定されます。こういった状況だからこそ、専門的なスキルを磨いたり、積極的に病気の予防や健康づくりの情報を発信できたりすることが求められます。自身の手で明るい未来を作っていきましょう。

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監修者のご紹介

星野 匡宣(薬剤師)

1998年、昭和薬科大学卒。多摩大学大学院にてMBA取得。
調剤薬局チェーンにてマネージャーを経験後、2009年にファーマリンクに入社。現在は、2023年にファーマリンクと合併したブラン・ド・ブランの執行役員。キャリアカウンセラーとしても活躍中。

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